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■ 研究ニュース

第58回「日経・経済図書文化賞」を受賞
島本実教授

商学研究科 島本実教授の著書『計画の創発―サンシャイン計画と太陽光発電』(有斐閣/平成26年11月刊行)が、日本経済新聞社と日本経済研究センター共催の第58回「日経・経済図書文化賞」を受賞しました。
本賞は、平成26年7月1日から平成27年6月30日(外国語著書は平成26年1月~12月)の間に出版された日本語又は日本人による外国語で書かれた経済図書を対象に、特に優れた図書に贈られたものです。
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shimamoto_1◆受賞作の内容を教えて頂けますか。

東日本大震災以後、再生可能エネルギー開発には大きな注目が集まっており、現在、政府は高い目標を掲げてその導入普及に努めています。しかしながら40年以上前の第一次石油危機の頃から、実は日本では産官学連携で再生可能エネルギーの開発が行われてきたことはあまり知られていません。それがサンシャイン計画です。本書はこのナショナル・プロジェクトの歴史を題材にして、成果の上がるイノベーション政策・経営について考察しようとするものです。 本書では経営組織論(組織社会学)を用いた経営史研究がなされます。
本書のユニークな点は、同じ歴史が三つの異なる視点から説明されることです。
第一のケース(第3章)は、サンシャイン計画の歴史が技術的合理性(合理モデル)の観点から記述されていきます。そこからは主に太陽光発電開発を題材に行政官や企業人たちが有望な技術を選択し、共同でその技術開発に努めたプロセスが明らかにされます。残念ながら1980年代中期に石油価格が低下してしまったので導入目標は達成できませんでしたが、それでも太陽光発電は現在かなり普及しました。 ここで一度、歴史のビデオテープを巻き戻しましょう。
第二のケース(第5章)は、視点を転換して計画の歴史が組織的合法性(自然体系モデル)の観点から記述されていきます。組織には慣性が働くため、ルーティンに沿って手続き通りに物事を進めて、計画を持続させるために、計画では多くの奇妙ことが起きたことがわかります。例えばサンシャイン計画で最も多くの予算が費やされたテーマは太陽ではなく石炭関係でした。税制上の理由で予算的に確保しやすいテーマが選ばれてしまったわけです。 ここでもう一度、歴史のテープを巻き戻します。
第三のケース(第7章)は、視点を転換して計画の歴史が社会的合意性(社会構築モデル)の観点から記述されます。ここではインタビューや当時の一次資料に基づいて、計画に参画した個々人の意味の世界が明らかにされます。そこには政策を何とか成立させ、自分の技術に予算を得ようとして組織や社会にアピールする人々の生身の世界が見えてきます。自らの技術の将来性を信じて、危険な橋を渡ることをいとわない企業人や研究者の呉越同舟の相互作用が、ボトムアップ的に計画を作り上げてきたとも言えます。『計画の創発』という本書のタイトルは、そうしたナショナル・プロジェクトの歴史の実態を指しています。

shimamoto_2◆今後に向けた抱負を聞かせて下さい。

日本において再生可能エネルギーは今後ますます重要になっていきます。
そこには二つの課題があります。一つは導入普及を進めるためにどのような方策が必要かという政策的な課題であり、もう一つは日本企業がこの分野で競争力を維持するためにはどうしたらよいかという経営上の課題です。難しいのは前者に力を入れることが、そのまま後者の課題の解決につながっていかないことです。
再生可能エネルギーの導入が進んでもそれが他国の製品ばかりであれば、日本の製造業としては残念なことでしょう。
しかしこの後、日本での太陽電池のイノベーションはさらに進み、変換効率がよい、あるいは製造コストが安い製品が登場することと思います。その開発の成功や普及を促進するためには、どのようなイノベーション創発の仕組みが政策的にも経営的にも作られるべきであるのかを、今後より詳細に明らかにしていきたいと思います。
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受賞名:日経・経済図書文化賞
表彰団体:日本経済新聞社、日本経済研究センター
受賞日:2015年 11月 5日
受賞場所:日本経済新聞社本社

(2015年11月24日)