商学部とは

「商学部」では何を学ぶのか

一橋大学商学部は一言でいえば「ビジネス」を学ぶところです。しかしビジネスに関する単なるテクニックやノウハウを学ぶところでは決してありません。経営学や会計学、マーケティング、金融論といった「企業経営に関わる現象を対象とした応用的な杜会科学」を学ぶことを通じて、実際の企業活動に関わる出来事や問題について深く考え、的確な分析をし、現実的な解決策を打ち出す、そういう真の意味での「実学」を身につけるところです。

どんな教育を提供するのか

商学・経営学の高い専門性を修得すると同時に、広く社会を考える教養を深めるための教育プログラムを用意しています。主に「講義」と「ゼミナール」という2つの方法が用いられ、このうち「ゼミナール」は、一人の指導教員が、数人から十数人という少数の学生と小さな教室で向き合い、互いに議論を重ねたりしながら学んでいく教育スタイルです。これを通じて専門分野の知識や考え方を身につけていくとともに、「経済社会に関して深く思考するとはどういうことか」を頭と身体に染み込ませていくのです。商学部の学生は全員、入学してから卒業するまでの4年間にわたってゼミナールでのきめ細かな教育を受けることになります。ゼミナールの仲間が生涯の友となることも少なくありません。

目指す人材とは

私たちが目指す人材は、すぐに役立つ知識のみを追求するのではなく、深い洞察力と温かな心をもって、自らが関わる企業を、そしてより大きな経済杜会を、適切な方向に導くビジネス界の指導者、Captains of Industryです。

商学部と経済学部の違い

「商学部と経済学部とで、学ぶことにどのような違いがあるのですか」という質問をしばしば受けます。大学やそれぞれの学部によって状況や考え方に違いがあるため一般論として述べることは難しいのですが、一橋大学商学部としては次のように考えています。

商学部での教育・研究で扱う内容を一言でまとめると、「企業経営に関わる現象を対象とした応用的な社会科学」といえるでしょう。ここから3つのことが示唆されます。この3つが、経済学部など他の社会科学系の学部とは異なる、商学部の特徴です。

特徴①

第一に、企業経営に関する問題・現象に焦点が当てられていることです。経済学をはじめとする他の社会科学でも、企業経営に関わる問題は部分的には扱われています。しかし商学部で学ぶ商学・経営学では、こうした企業経営の領域に対象が絞られています。

特徴②

第二に、対象が企業経営に絞られているものの、それにアプローチする方法は限定されていないことです。企業経営に関する問題・現象を分析する場合には、経済学、社会学、歴史学、心理学、法学といった隣接するさまざまな領域の考え方が応用されています。例えば、金融論には、多くの経済学の理論や考え方が反映されており、両者の結びつきは強いといえます。とはいえ、商学・経営学全体としては、経済学とだけ関係があるわけではありません。会計学は法学と、経営学は社会学などとも関係が深いのです。その意味で、商学・経営学は「応用的」な社会科学なのです。

特徴③

第三に、「応用的」ではあっても、独自の考察方法が発展していることです。例えば、経営学の領域の1つである経営組織論では、社会学、心理学、経済学などの考え方を基盤として、企業組織の問題や現象を扱っていますが、そこで考察されている内容は社会学などにおける考え方を直接適用したものではなく、独自の理論体系として発展しています。あるいは、会計学の一領域である監査論では、公認会計士の判断・意思決定を分析するのに心理学を応用しますが、分析の対象となっているのは心理学とは異なり「高度な知識を有する専門家」であるため、その研究成果は逆に心理学の発展にも寄与しています。

商学部で扱う内容は経済学部よりも実践的であると見られることも、しばしばあります。ビジネスの現場で直接役立つ内容を扱っているために、このような印象を持たれる方が多いかもしれません。しかし、「経済学が基礎で、商学・経営学は実践」、あるいは「経済学は抽象的で、商学・経営学は具体的」という区別で、両者の違いがすべて説明できるわけではありません。上述の3つの点とも関係するように、商学部で扱う問題や現象は応用的であると同時に、学問的にも固有の領域をもっています。

単にビジネスの世界で役に立つというだけでなく、学問的にも独自の視点から、企業経営に関する問題の本質を掘り下げています。商学部で学ぶ「実学」には、しっかりとした理論の裏打ちがあるのです。

一橋大学 商学部を選ぶ理由

ビジネス最前線の東京でビジネスを学ぶ

商学部で学ぶのはビジネスです。特に、実際の企業活動に関わる出来事や問題について深く考える「実学」です。東京は、その最前線にあります。講義に迎えるゲスト講師や、実際のビジネスケースを扱うフィールドワークなどを通じて、ビジネス最前線の情報や体験がリアルに得られます。

一橋ビジネススクールでMBAコースを教える教員による指導/5年一貫でMBA取得

一橋大学商学部では、将来の「Captains of Industry」として企業経営や産業界をリードする人材を育成しています。商学部の教員の約7割が、一橋ビジネススクールにおいてMBAコースの講義やワークショップも担当しており、高度な経営人材の育成において豊富な経験を持っています。また、企業経営者など第一線で活躍する実務家講師による講義も多くあります。講義の中にはMBAコースと共修となっているものもあり、学士課程でありながらMBAレベルの学びに触れることができます。
さらに、学部・修士5年一貫教育プログラムにより、1年在学を延長することでMBAを取得することも可能です。これによりMBAを保有する高度専門人材としてキャリアをスタートさせることができます。

やりがいのある仕事に就く-高い’就職力’と企業からの評価

卒業後の進路は、大学選びの重要な判断材料になるでしょう。一橋大学商学部の就職率は極めて高く、またビジネス界をリードする企業あるいは急成長している企業への就職を叶えています。

 主な就職先:卒業後の進路:データから見る実際の進路|一橋大学商学部

さらに、人材として企業から高い評価を得ています。
 卒業生が活躍する大学ランキング2025、一橋大学1位・上智大学2位 企業人事に聞く - 日本経済新聞
 全国社長の出身大学、14年連続トップの大学は? - ITmedia ビジネスオンライン

加えて、起業を希望する学生への支援も行っています。
 スタートアップ支援:大学発スタートアップ支援|一橋大学

首都圏以外からの学生のための住環境整備

一橋大学には、全体で1000室を越える寮が整備されており、これは全国有数の規模です。中でも小平キャンパスにある一橋大学国際学生宿舎一橋寮は、東京ドーム2個分の敷地に、学部生・大学院生を対象に800近い部屋数を有しています。一橋大学在学の日本人学生・外国人留学生のほか、東京学芸大学、東京農工大学、電気通信大学の外国人留学生が入居しており、学生間の交流も活発に行われています。

 寮の情報(寮・サークル | 一橋大学 一橋大学で学びたい方へ

留学のしやすさ

渋沢スカラープログラム(SSP)」では、英語のゼミナールや長期の海外留学を通して、国際的なビジネスの場で必要とされる論理的思考力や分析力を養成します。一橋大学は、100を越える海外の大学と交流提携を行っています。また、さまざまな奨学金により留学を手厚くサポートしています。商学部では、毎年約40名(1学年学生数 約240名)が長期留学をしています。

 一橋大学海外派遣留学制度(一橋大学海外派遣留学制度 - 国際教育交流センター|一橋大学

5年間で学部+修士という進路

「学部・修士5年一貫教育プログラム」を利用し、商学部で4年間学んだ後、さらに高度な勉強をしたい人には、所定の試験を受けて大学院に進学する道も開かれています。大学院へは通常は学部を卒業してから進学することになりますので、大学院で修士号を取得するまでには、学部入学時から数えると最短でも6年間(=学部4年間+修士課程2年間)かかるのが普通です。学部・修士5年一貫教育プログラムでは、学部4年次から大学院修士課程の授業を履修することによって、修士課程を形式的には、1年間(実質的には学部4年次を含めて2年間)で終えることで、1年間短縮できます。

 5年一貫教育プログラムについて

150年のあゆみ

一橋大学の歴史は、日本における近代化の歴史と重なります。1868年の明治維新を契機として、新たな企業や産業が次々と日本に生まれました。そこで必要とされるビジネス・リーダーを育成するため、1875年に森有礼が東京・銀座に私塾として商法講習所を開設しました。渋沢栄一もまた、商法講習所を支えた一人です。

一橋大学は、時代の移り変わりとともにその教育・研究領域を広げ、現在は商学、経済学、法学、社会学、ソーシャル・データ・サイエンスという5学部を擁する「社会科学の総合大学」となっています。商学部は、商法講習所以来の伝統をもっとも長く受け継ぐ学部として、優れた人材を産業界および学会に数多く輩出し、発展し続けてきました。

長い歴史の中で、一橋大学は、古くから“Captains of Industry”の育成を使命として掲げてきました。これは、イギリスの思想家にして歴史家であったThomas Carlyleが1843年に記した「Past and Present」に登場する言葉に由来しています。この考えは、21世紀に学ぶ今の学生にも受け継がれています。

商学部長の挨拶

一橋大学 商学部長・大学院経営管理研究科長 福川裕徳

We foster captains of industry who create value for business and serve communities in Asia.

これが一橋大学商学部のミッションです。このミッションは、Leadership、Innovation、Integrityという3つの要素で構成されています(詳細についてはこちらをご覧ください)。商学部のカリキュラムは、このミッションの実現を目的として設計されています。具体的には、幅広い専門知識を習得するための講義科目と、その知識を応用しながら自らの問題意識にしたがって課題を深く考察する演習という2種類の授業で構成されています。

講義科目は、経営学、会計学、マーケティング、金融論といった諸領域について入門から発展まで体系的に学べるように配置されています。また、4年間にわたって演習(ゼミナール)が設置されていることは商学部の大きな特徴です。1年次には、ビジネスを通じて社会課題を捉える目を養うことを目的とする導入ゼミナールが、2年次には、識別した社会課題を学問を通じて分析・考察することを目的とする前期ゼミナールが、そして3、4年次には、特定の学問領域における学びをさらに深め、最終的にその成果を卒業論文にまとめる後期ゼミナールが設置されています。

これらのカリキュラムを通じて、社会が直面するさまざまな課題を解決できる人材を育成するとともに、社会に対して新たな価値を創造することが一橋大学商学部の使命であると考えています。

2024年9月
一橋大学 商学部長・大学院経営管理研究科長
福川 裕徳

商学部のミッション

LEADERSHIP INNOVATION INTEGRITY

次世代のビジネスリーダーの養成 Captains of Industry

実業界のリーダーを意味する「キャプテンズ・オブ・インダストリー」。

一橋大学は、創立以来、教育研究機関として優れたビジネスリーダーを数多く輩出してきました。
この役割は、今日でも一橋大学の最大の使命であり、経営管理専攻のミッション・ステートメントにも示されています。

ミッション・ステートメントは経営管理専攻の学生、教員、スタッフが共に尊重する価値観を表明したもので、優れた学術環境をつくりあげることを目指すものです。

詳細については、以下の解説ページをご覧ください。