1875年に「商法講習所」として開設された一橋大学は、その前身である東京高等商業学校・東京商科大学の時代から、強い使命感と客観的な分析力、深い思考力を備えた高度専門職業人を育成し、日本のみならず世界の経済社会の発展を支えてきました。
商学部は世界で最も長い歴史をもつビジネススクールのひとつとして、その伝統を直接受け継ぎ、企業や市場に関連した現象に対して進んで関心を持ち、それを深く観察することで解決すべき問題を設定し、社会科学的な思考・理論と現実に生じる事象との往復運動を繰り返しながら問題に対する創造的な解を導き、さらにそれを実行に移せる人材の育成を使命としています。 こうした人材は、①深い洞察と効果的なコミュニケーション・スキルを併せ持つリーダーシップ、②高度な専門的スキルに支えられた創造性、③他者を思いやりグローバルな視野を持つ高い倫理性や高潔な精神を備えていなければなりません。 商学部における学修を通じ、学んだことを単に知識のレベルにとどめるのではなく、直面する問題の解決に向けその知性を創造的に動員できる「強い実践志向」と、使用する言語や文化的背景の相違に制約されることなく自らの能力を発揮できる「高い国際性」を兼ね備えた人材として、国内外で社会に貢献し活躍していくことが期待されます。
学部履修規則に定められた卒業要件を満たしたことをもって、『1.修得する能力・資質等』に示した能力および資質等を身につけたものと判定します。

一橋大学商学部は一言でいえば「ビジネス」を学ぶところです。
しかしビジネスに関する単なるテクニックやノウハウを学ぶところでは決してありません。経営学や会計学、マーケティング、金融論といった「企業経営に関わる現象を対象とした応用的な社会科学」を学ぶことを通じて、実際の企業活動に関わる出来事や問題について深く考え、的確な分析をし、現実的な解決策を打ち出す、そういう真の意味での「実学」を身につけるところです。
この「実学」には社会科学の理論という裏打ちがあるのはもちろんのこと、哲学・思想という裏打ちもあります。一般に、どんなに教養的に見える学問も、じつは非常に高度なテクニックやスキルに支えられている側面があります。かたや、一見、スキルやテクニックのように見える学問にも、きわめて高度な教養的側面があるのです。商学や経営学の領域は、中身を知らない人たちからは、ビジネスのための手段であり、スキルやテクニックの体系のように思われるかもしれません。しかし私たち一橋大学商学部は、ビジネスの方法とともに、その背後にある思想や哲学といったものも研究対象とし、それを学生諸君にわかりやすく、なおかつしっかりと、伝えることを常に心がけています。
こうした「実学」を身につける上でとりわけ重要な役割を果たすのが、一橋大学で100年以上の伝統を誇る「ゼミナール」という少人数教育メソッドです。商学部ではことのほかゼミナール教育に力を入れています。このゼミナールを中核としつつ、ビジネスを広く深く学べるようにさまざまな講義が体系的に提供されています。

私たちが目指す人材は、すぐに役立つ知識のみを追求する近視眼的な合理主義者ではありません。
深い洞察力と温かな心とをもって、自らが関わる企業を、そしてより大きな経済社会を、適切な方向に導き、人々を物質的にも精神的にも豊かにしていけるビジネス界の指導者。そうしたCaptains of Industryこそが、私たちの目指す人材です。
卒業後、グローバルに展開する企業に就職してビジネスの最前線で活躍しようという人にとってはもちろんのこと、家業のビジネスを継いでさらに発展させていこう、あるいは、将来自分でビジネスを興そう、という人にとっても、そのCaptains of Industryたらんとする志を胸に、大学時代の4年間思う存分学ぶのに申し分のない場だと、私たちは自負しています。
なお、卒業生の進路については〈データから見る実際の進路〉、〈卒業生の業種別就職先一覧〉をご参照ください。

グローバル・リーダーを育成するためのプログラムが揃っています。
一橋大学の5つの学部では、東アジア地域を中心として世界の多くの国から留学生を迎えています。商学部でも多くの留学生が学んでおり、日常の学生生活の中で、異なる文化的背景をもち、勉学意欲も高い留学生たちと、共に学び交流する機会があります。
一方、商学部では日本人学生のさらなる国際化にも力を注いでいます。例えば、2012年度から、既存の外国語科目での講義に加えて、前期課程を対象とする商学部独自の英語教育プログラム・PACE(Practical Applications for Communicative English)を行ってきました。現在では1年生を対象とした全学的なものに発展しています。
また商学部では、2017年に2年生以上の学生に対して、EDGE(English Discourse for Global Elites)を設置し、こちらも現在は全学的な科目となっています。大学時代を通じて、英語コミュニケーション能力をブラッシュアップできる機会が豊富に提供されており、これらのプログラムでは、外国人教員による実践的な講義を通じて、多くの日本人の弱点といわれるオーラル・コミュニケーション・スキルの向上を図っています(詳細はこちら )。
もう一つは2013年度からスタートした渋沢スカラープログラムです。商学部の専門科目やゼミを英語で学び、21世紀のグローバル・リーダーの育成を目指しています(詳細はこちら)。
その他にも、商学部生のみならず一橋大学の学生全体に開かれた機会として、さまざまな海外留学のチャンスがあります。一橋大学には多くの海外提携校があります。
