渡辺周先生、谷口諒先生が組織学会高宮賞(論文部門)を受賞しました。

2018/06/19

watanabe_name.jpg 2018年6月9日~10日、東京大学で開催された2018年度組織学会研究発表大会におきまして、本学の大学院に在籍していた渡辺周先生(東京外国語大学世界言語社会教育センター助教)、谷口諒先生(一橋大学大学院経営管理研究科経営管理専攻イノベーション研究センター特任助教)のお2人が、そろって高宮賞(論文部門)を受賞されました。これは、組織科学の専門誌である『組織科学』に前年に掲載された論文の中で、最も優れたものに与えられる賞です。受賞者は40歳以下という条件があり、その受賞は若手の経営学研究者にとって大きな名誉とされています。

 渡辺先生の論文題目は、「強い監視による看過の増幅:コミットメント・エスカレーションに役員が与える影響」です。一般に外部取締役が取締役会に参加することは、経営の健全化に有効とされています。しかしこの論文は、銀行の不良債権処理を題材にして、外部者が強い監視を行うほど、人間は自分のポジティブなイメージが傷つくことを恐れるため、驚くべきことにかえって撤退の決断ができなくなることがあることを明らかにしています。この結論は、外部取締役の一律の有効性を問うとともに、組織において外部者の監視がもつ逆説を示唆しています。

taniguchi_name.jpg 谷口先生の論文題目は、「シンボルを用いた資源獲得の成功による資源配分の失敗:『バイオマス・ニッポン総合戦略』の事例」です。一般に政府は特定の政策目的を達成するために、事業を選択し、それらに予算を集中投下します。しかしそれを逆用して、政策にそれほど関係ないテーマについても予算を獲得しようとする「便乗予算」が発生するようになると、政策目的は骨抜きにされていってしまいます。この論文はバイオマス政策を題材に、その意味連関を分析し「便乗予算」が発生していく組織病理現象をとても鮮やかに可視化することに成功しました。

 以上のように本学で学位を取得した2人の研究者が、栄えある高宮賞(論文部門)を受賞したことは、本学の経営学教育・研究の充実ぶりを物語っています。一橋大学は、長年にわたり実業界に有為な人材を輩出してきただけでなく、商学・経営学分野における日本全国の数多くの大学教員や研究者を育ててきました。商学・経営学が経済学部の中に置かれた他の国立大学とは異なり、一橋大学商学部は、独立した「学部」として、教員・カリキュラムともにトップクラスの陣容を誇っています。渡辺先生、谷口先生に続き、未来の大学教授を目指す若き頭脳が、一橋大学大学院(研究者養成コース)の門をたたいてくれることをお待ちしています。

syugo.jpg