曽根健一朗さん(経営管理研究科研究者養成コース修士課程)が各界の「アジアを代表する30歳未満の30人」に選ばれました

2021/05/12

Forbes Asiaが4月に発表した「Forbes 30 Under 30 Asia」(アジアを代表する30歳未満の30人)2021年版にて、本学大学院経営管理研究科研究者養成コース修士課程に在籍中の曽根健一朗さんが選出されました。有力経済誌「Forbes」は、ビジネスやアート、エンターテイメント、スポーツなどで活躍する人物を10部門で各30人選び、毎年発表しています。曽根さんが選ばれたのは、「INDUSTRY, MANUFACTURING & ENERGY」カテゴリーにおいてです。

曽根さんは、2012年に一橋大学商学部に入学した後、大学院在学中の2018年に株式会社KOSKAを起業したベンチャー経営者です。このたび商学部の講義にゲストスピーカーとしてご登壇いただき、学部ゼミナール時代からの指導教員である尾畑裕教授とともに対談形式でご講演頂きましたので、創業に至るまでの概要を紹介します。(以下、聞き手は藤原雅俊教授)


KOSKAの事業を紹介していただけますか。

曽根健一朗さん
曽根健一朗さん

曽根: 我々は、IoT技術を駆使して製造業の原価管理を自動化し、各工程の細かな作業実態を金額で見える化する取り組みを進めています。現在は、主に多品種少量生産型のメーカーに対して、作業実態を見える化するだけでなく、収集したデータを解析して原価の見積もり精度を高める利益改善提案サービスも提供しています。生産工程の細かな作業実態はこれまでなかなか把握されてこなかった領域ですが、我々はIoTセンサ等を活用することによって作業者の追加負担なく把握できるようにしています。

尾畑: 多くの中小企業が、工場のコストマネジメントに関心を持ちながらも、これまでなかなか手を出せませんでした。しかし曽根さん達のサービスは、中小企業が手軽に、作業者にまったく負担をかけずに導入できるため、大変魅力的だと思います。この事業の潜在市場は非常に広いのですが、KOSKAは、多品種少量生産型の会社を主たるターゲットにして、原価の正確な見積もりという彼らが最も満足しうるサービスを提供するようになっています。利用料をサブスクリプション型にして導入コストを低く抑えているのも特徴ですね。

IoT技術や工場の改善提案サービスは、大学生にはなかなか馴染みがなさそうにも思えます。どのような大学生活を送っていたのでしょうか。

事業概要を紹介する曽根さん
事業概要を紹介する曽根さん(上)
聞き手の藤原雅俊先生(中)
指導教員の尾畑裕先生(下)

曽根: ダンスサークルの活動に明け暮れていましたが、2年次に履修した前期ゼミナールで読んだシリコンバレーに関する英語論文が面白くて強烈に印象に残っていました。その後3年次に、原価計算とプログラミングを学ぶ尾畑ゼミに入ってJavaを学んでいくうちに、プログラミングの面白さに取り憑かれました。Javaで動くということもあって、ダンス関係のAndroidアプリを試作してみたのですが、今思えばとても小さなものながら自信になったのです。

そこで、心に残っていたシリコンバレーに行ってみたいと思うようになり、数ヶ月滞在して現地のエンジニアと交流させてもらいました。帰国してからはフリーランスエンジニアとして働きながら一橋の学費を払っていました。

プログラミング能力を磨いた後、工場とどのようにつながって起業に至ったのでしょうか。

曽根: 帰国した後、日本原価計算研究学会で会長を務めていた尾畑先生がIVI(Industrial Value Chain Initiative)という団体と共同で「IoTとコストマネジメント研究会」を立ち上げまして、そこに参加させて頂いたのがきっかけです。その参加企業だった武州工業さんが非常に早くからIoT技術を使って工程情報を収集していまして、その情報を提供してくれました。学部4年生だった私は、青梅市にある本社工場に何度も足を運び、かなり勉強させてもらいました。

尾畑: 曽根さんを起業家にしようというつもりは全くなく、プログラミングがよくできるということで声をかけて、お手伝いとして入ってもらいました。研究会では色々なリクエストが参加企業から出るので、曽根さんがプログラミングしてアプリを作ってそうした声に応える、という感じでしたね。当時、武州工業さんでは収集した情報のより効果的な活用策を模索していたところでした。名物経営者だった同社の林英夫社長(現会長)がとてもオープンに情報を共有してくれまして、一緒に色々と試行錯誤していました。

曽根さん、聞き手の藤原先生、指導教官の尾畑先生
和やかに進むご講演

曽根: そうした中で、IoT技術を使って作業者の追加負担なく細かな作業を見える化するツールのプロトタイプが徐々にできてきたのです。大学院に進学していましたが、なんかこれ面白いなと思って、twitter経由で知り合いになっていたベンチャーキャピタリストに話しに行ったところ、チームを作って法人化したら即出資という流れになりました。こんなに速いとは思わなかったので、正直、驚きました。そこで、他大のプログラミング友達、一橋MBAに通っていた友人、そして私がプログラミングを教えていたダンスサークルの後輩に声をかけて、4人で起業したわけです。

尾畑: 起業することになったと聞いた時は、私も驚きました。思わず「曽根さん、原価計算できたっけ?大丈夫?」と尋ねたくらいです。

曽根: 「わからないことがあれば先生に聞くので大丈夫です」と答えました(笑)。


少人数でのゼミナール教育を重んじる商学部・経営管理研究科ならではの創業ストーリー。この後も和やかな雰囲気の中で、講演は続きました。曽根さんは、失敗確率の高いベンチャーを経営する上でとにかく日々考え抜くこと、アイデアについては何度も周囲にぶつけてフィードバックをしつこくもらって磨き続けること、そして、アイデア止まりではなくモノをしっかり作れるチームを組むこと、といった重要性を実感していると語ってくれました。

曽根さんのさらなる活躍を心から期待しています。

【関連リンク】

Forbes 30 Under 30 Asia 2021
https://www.forbes.com/30-under-30/2021/asia/

「INDUSTRY, MANUFACTURING & ENERGY」にて選出された曽根健一朗さん
https://www.forbes.com/30-under-30/2021/asia/industry-manufacturing-energy?profile=kenichiro-sone

株式会社KOSKA
https://www.koska.jp