商学部2年 愛川 優さん/参加者レポート:サステナブルファイナンスを考えるFDSFに参加して

2023/08/10

去る7月21日に、一般社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブ(以下、FDSF)主催による「FDSF Global Conference 2023 サステナブルな未来創造を目指して」という国際カンファレンスが、産学官協力のもと開催されました。本学からは商学部2年で会計、ガバナンスを学ぶ、データ・デザイン・プログラム三期生の愛川優さんが、ブレイクアウト・セッション「次世代に聞く:サステナブルな社会への科学と金融の力」に登壇しました。さまざまなバックグラウンドを持つ参加者とともに、学生ならではの視点で、有意義なディスカッションが展開されました。

<参加者レポート>
商学部2年 愛川優

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初めてのカンファレンス登壇、FDSFに参加

今回、一年次の導入ワークショップでご指導いただいた、経営管理研究科教授の円谷昭一先生から、FDSFでの学生参加のパネルディスカッションの機会をいただき、パネリストとして参加をしました。せっかくの素敵な機会ですし、元々バックグラウンドが異なる人と交流し、意見交換をすることが好きなので二つ返事で参加させていただきました。しかし、他の登壇者の方々は学年も先輩でしたし、このような場で自分の意見を人に伝えるということ自体が初めてで、参加が決まってから2カ月くらいずっと緊張していました。

サステナブルファイナンスと教育

当日のパネルディスカッションは、「次世代に聞く:サステナブルな社会に向けた科学と金融の力」というテーマで行われました。他の学生参加者の方は、東京大学大学院工学研究科の小原大智さん、イギリスのエジンバラ大学でビジネス・マネジメントを学んでいる西川仁さん、お茶の水女子大学で日本語・日本文学を専攻しているパターソンラジャック・サーシャさんで、皆学んでいる分野も異なり、ディスカッションでは新しい発見もあって、とても刺激的でした。トピックの中で特に興味深く感じたのは、「社会のサステナビリティを促進するための学び、特にサステナブルファイナンスをもっと理解するために、どのような教育の機会があったら多くの人が興味を持ち、人によっては専門人材となっていくと思うか」という問いでした。私自身も教育のシステムをどのように変えれば子どもたちがより楽しく、意欲的に学ぶことができるかということに興味があります。これらの課題解決のために「まずはディスカッションする機会を増やす」や「主体的に発言しやすい環境づくり」など、色々な意見が交わされ、サステナブルファイナンス以外の教育にも通じる面白い視点だなと感じました。

「文理の壁」を壊す必要性

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パネリストの九州大学のキム・シューマッハ准教授や、私たち学生がディスカッション内で焦点を当てていた大きなトピックとして、「文系と理系の壁」というものがありました。このディスカッションにおいては、サステナブルな課題を考えるときに、社会的には密接に関係しているものの、学問においては文系と理系の両派が分断されているため、解決に弊害が出ているであろうというものです。文系・理系の区別は、学問の専門化・細分化が進む中で、大きな一枠として扱うには大きすぎる概念となったために、何か区分を設けた方が便利だということでその区別があると思うので、私個人の考えとしては、ただなくせばよい、とは考えていません。ですが、「文系」と「理系」というそれぞれの世界で学術研究や人同士の交流が分けられているために文理の壁を超えることが難しい、ということは大きな問題だと思います。今現在の課題、例えばどのようにサステナブルファイナンスを実現するのかを解決するためには、文理の壁を壊し多様な視点から問題を見つめ直すことが必要なのではないかと思います。

私は、サステナブルファイナンスを実現するための一手として、企業の利益やステイクホルダーへの価値提供と、サステナビリティが両立することが必要だと考えています。主催者でFDSF代表理事の小野塚惠美さんからも、一橋の授業の中で、円谷先生が学生に対して行った「投資先にどのような企業を選びたいと思うか?」というアンケート調査に対し、持続可能性向上に積極的である企業を選びたいという回答が多かったというエピソードの紹介がありました。

FDSFに参加して得られた知見や縁

カンファレンス終了後にも、登壇学生の方々と交流する機会があり、各々が専門的に学んでいる分野についての話や「文理を必ず選択しなければいけない教育のシステム」などについても、意見を交わすことができました。また、小原さんの後輩の話として、「企業のサステナブルレポートのデータ分析を行おうとしている」と伺い、どのような方法でデータを加工し、どのような結果が得られるのかなど、DDPでデータ・デザインを学ぶ身としてはとても興味深く、こうした大学や分野を越えた交流で、得るものが多くありました。

当日は知り合いにも会えず、緊張のあまり昼食も食べられないほどでしたが、本番には円谷先生も応援に駆けつけてくださり、参加している方々と話をするうちに、少しずつ緊張が和らぎ、ディスカッションを楽しむことができました。また、このカンファレンスには、多彩なコミュニティから参加されている方々と知り合いになる機会もいただけて、実りのある貴重な経験になったと思います。大学生活の中でもサステナブルファイナンスについて考える機会は増えると思うので、ぜひ今回の知見を活かして、積極的に勉強していきたいと思います。

※サステナブルファイナンス
持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の採択等、持続可能な社会の構築が大きな課題となる中で、新たな産業・社会構造への転換を促し、持続可能な社会を実現するための金融。