花崎正晴先生の最終講義が開催されました

2023/11/30

11月12日(日)に「私の研究者人生を振り返る―お世話になった皆様へ感謝の気持ちを込めて―」と題して、花崎正晴名誉教授の一橋大学最終講義が、本学インテリジェントホールで開催されました。花崎先生は長年にわたり一橋大学経営管理研究科・商学部で金融システム論、ゼミナール、ワークショップ等の科目を担当され、2020年の3月で定年退職を迎えられました。コロナ禍により延期されていた最終講義を、花崎正晴ゼミナールOB・OG会と本学経営管理研究科の主催により開催しました。会場には135名の参加者が集まり、オンラインでも多くの方が最終講義を聴講しました。司会を担当した本学経営管理研究科の安田行宏教授より、花崎先生の経歴のご紹介と在任当時、年間29回もの研究会が開催された話など、先生との懐かしい思い出が語られました。

感謝の気持ちを込めて

はじめに、花崎先生より参加者に向けて、「本当にいろいろな方にお世話になって、ご支援いただいて、それでなんとかやってきた。今はそれに尽きます」と感謝の言葉を述べられました。今回の最終講義は、「私の研究者人生を振り返る」ということで、研究者としての時代区分に分けて、当時のエピソードや研究実績などをご紹介になりました。

宇沢弘文先生との出会い

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日本開発銀行設備投資研究所でめぐり逢い、家族以外で最も長い時間を一緒に過ごされたという、東京大学名誉教授の宇沢弘文先生との思い出の数々をお話しになりました。中でも思い出深いのは、1984年、当時26歳のころに設備投資研究所で書かれた初めての査読論文『日本の設備投資行動の構造変化-資本ストック調整型およびジョルゲンソン型モデルによる分析-』の報告会でのことでした。その頃アメリカでは、「ジョルゲンソン型投資理論」が主流で、それを日本で応用した例がなかったので、このテーマで研究発表をされたということです。ですが、発表の場で「はじめに...」と言ったところで、宇沢先生が前に出てきて、ジョルゲンソン型投資理論に関連していろいろなことを書き始めてお話をされ、結局のところ発表の時間が終わってしまったそうです。花崎先生は、大変ショックを受けたとのことでしたが、その次の発表の機会では計測モデルを若干改良して臨み、「ジョルゲンソンを越えたね」と宇沢先生からコメントをいただいたことを懐かしく振り返られました。会場からは笑い声や拍手が沸き起こり、最終講義に参加された方々を楽しませようとする花崎先生のお人柄がうかがえる、和やかで華やかな講義となりました。他にも、これまでの研究・教育活動を通じて交流を深められた国内外の錚々たる経済学者などとのエピソードを紹介され、その一人ひとりに感謝の気持ちを述べられました。

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東京大学名誉教授 堀内昭義先生(右)

閉会の挨拶

閉会のセレモニーでは、花崎先生にとって恩師のような存在で設備投資研究所をベースに、最も長い間指導を受け共同論文のご執筆もされている、東京大学名誉教授の堀内昭義先生より挨拶がありました。「花崎さんの学問の大きな柱となっているのは、新古典派的な経済学と、日本開発銀行設備投資研究所で身に付けられた実際的な経済情勢とを、結びつけて議論をするというものであったのではないかと思う。今後もさらに議論を押し進めていただいて、日本経済の大きな問題も含めて、論じていただければと思っています」との言葉が贈られました。また、OB・OGを代表して、MBA金融ワークショップで花崎先生から学ばれた、児山紗也さんから花束が贈呈され、大きな拍手で閉会しました。

花崎先生ご経歴

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本学兼松講堂での記念撮影(2020年)

1979年に早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業し、日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)に入行されました。同行設備投資研究所、在パリOECD経済統計局、在米ブルッキングス研究所、一橋大学経済研究所等を経て、2007年10月に日本政策投資銀行設備投資研究所長に就任され、2012年4月からは一橋大学大学院商学研究科(現経営管理研究科)教授として着任されました。後進の育成を通じて、次世代を担う優秀な人材を学会や産業界に数多く送り出され、本学の教育研究の発展のために尽力されました。2020年3月に一橋大学を定年退職し、一橋大学名誉教授となられました。研究面では、コーポレート・ガバナンスを中心に、企業論における幅広い領域で、先駆的な研究を数多く発表され、この分野の第一線で活躍されてきました。特に、単著『企業金融とコーポレート・ガバナンス―情報と制度からのアプローチ』の書籍において、2009年度エコノミスト賞を授与されています。学外においては、国際科学研究委員会の委員を務められるなど、我が国における学術研究の発展に寄与されてきました。現在は、埼玉学園大学の教授と、設備投資研究所の顧問を務められています。