2025/04/02
去る3月18日、学位記授与式当日、別館中会議室にて、第57回内藤章記念賞論文入選者の表彰式を行いました。
内藤章記念賞は、本学の前身となる東京高等商業学校、東京商科大学において、銀行論、金融論、貨幣論等の講義を担当された故内藤章先生の門下生が、昭和42年12月、本学学生の金融論、貨幣論等の研究を奨励するため、一橋大学に内藤章記念賞基金を寄付され、毎年1回、広く学部及び大学院の学生から論文を募集するものです。表彰式に出席した入選者には加藤俊彦理事・副学長(教育統括)より表彰状の授与と祝辞が贈られました。
経験依存的な学習行動の資産価格変動への影響 〜連続時間世代重複モデルによるアプローチ〜(1等)
研究者養成コース 羽生寛明さん(2025年3月修了)
この度は第57回内藤章記念賞に入選の栄誉を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の皆様をはじめ、ご指導いただいた先生方、共に学んだ仲間、そして支えてくださった方々に深く感謝申し上げます。
本研究は、近年の物価上昇に関する経済ニュースを通じて抱いた疑問から生まれました。人々の物価変動に対する特別な期待形成が、経済変動を理解する上で重要なファクターであると考え、その影響を分析することに関心を持ち続けてきました。本研究は、そこでの思索が結実したものとして、私にとって非常に意義深いものとなっています。
今後は、本研究をさらに発展させるとともに、物価動向と人々の期待の関係についての理解を深め、より多くの金融市場での諸現象を理解することにつなげていきたいと考えています。引き続き理論と現実の往還を意識しながら、実社会の課題に対して学術的な知見を活かせるような研究を目指してまいります。
改めまして、このような素晴らしい賞をいただけたことに感謝し、これからも学問の道を歩んでいく決意を新たにしております。
取締役のソーシャル・ネットワーク・キャピタルが企業リスクテイクに及ぼす影響(2等)
経営管理プログラム 大久保柳華さん(2025年3月修了)
この度は栄えある賞をいただきありがとうございました。2年間ご指導いただいた三隅隆司先生(経営管理研究科教授)をはじめ、ワークショップの仲間、諸先輩方から貴重なアドバイスをいただき論文を完成させることができました。心から感謝しています。
1年次の導入ワークショップでは、先行文献を読み、仮説を立て、データを集め、分析し、考察するという一連の基本を覚えるところから始まりました。研究者の意図を汲み取りながらアカデミックな論文を読む力もつきました。ただし手法がわかっても、問いを立てることが出来なければ先には進めません。2年次には、本当に明らかにしたいことは何なのか、まさに「自問自答」を繰り返すことで、自分の内に秘めた本質的なテーマに辿り着きました。
私は取締役として、加えてこれまでの広報のキャリアから社会関係資本を経営に活かしたいと考え、ソーシャル・ネットワーク・キャピタルと業績の関係を検証しました。そして分析結果からは、取締役会のガバナンスの在り方への重要な示唆を得ることができました。今後も大学院での学びで身に着けた「理論と現実の往復運動」を実践していきたいと思います。
日本企業の企業文化と企業価値の関係性に関する実証分析 ―自然言語処理を用いた企業文化の定量化とその応用─(2等)
経営管理プログラム 吉田浩章さん(2025年3月修了)
経営管理プログラムで過ごした2年間の集大成であるワークショップレポートを基に応募した論文で、このような光栄な賞をいただけたことを本当にうれしく思います。
私が応募した論文は、機械学習の一分野である自然言語処理を活用して、日本企業に潜む企業文化を定量的に測定することに挑戦したものです。このテーマは、指導してくださった三隅隆司先生から紹介いただいた論文を参考にして研究を始めたものですが、私自身、自然言語処理やそれを実践するためのPythonに精通していたわけではなく、それらを独学で学ぶことから始める必要がありました。そのため、最終的な成果に辿りつくまでには多くの壁にぶつかりました。途中、諦めそうになることもありましたが、三隅先生から「まだ、諦めるのは早いよ」と励ましをいただき、それならばもう少しだけ頑張ってみようと自分を奮い立たせたことは本当に良い思い出です。
今回の研究が今後の社会人生活で即座に役立つものではないかもしれませんが、研究過程で得た経験は、さまざまな局面で生きてくると確信しています。このようなかけがえのない経験を得ることができ、入学してよかったと心から感謝しています。ありがとうございました。
ツイッター上の公衆感情と企業株価との間に顕著な相関関係が存在する(佳作)
経営分析プログラム 遅春梅さん(2025年3月修了)
入学前、私は日本でシステムエンジニアとして働いていました。しかし、データにせよIT技術にせよ、それらは単なる独立したツールに過ぎませんでした。そこで研究計画書には、自身のIT技術とビッグデータを経営学の知識と組み合わせることで、どのような衝突や火花が生まれるのか、さらに深く研究したいと記しました。
一橋大学での教育に感謝いたします。経営戦略から企業財務などの必修科目を通じて、日本の経営学の知識をしっかりと学ぶことができました。また、James Routledge教授(経営管理研究科)のAccounting and Financeなどの選択科目は、国際的な視野を与えてくれました。
現在、AI技術は日進月歩で発展しており、各業界に変革をもたらす新たな力となることは間違いありません。そのため、私はこの分野に身を投じ、この重大な変革の中で自分なりの貢献ができればと考えています。機械学習技術により、株価と世論の感情との関係を研究することが可能になりました。指導教授である篠沢義勝先生(経営管理研究科)は博識であり、私の気持ちを理解しながらも、目標に向かって粘り強く、時に厳しくご指導くださいました。その結果、理論と実践を結びつけることができ、この論文を完成させることができました。
内藤章記念賞を受賞できたことを大変光栄に思います。そして、これからの道筋がより明確になりました。一橋大学で学んだ経営学の知識と自身のIT技術を活かし、今後も日本でAIの発展に貢献していきたいと考えています。
温室効果ガス排出量と企業パフォーマンスの関連性の分析(佳作)
経営管理プログラム 茂木拓馬さん(2025年3月修了)
名誉ある賞をいただき、大変光栄です。受賞できたのは、偏に三隅隆司教授とワークショップの同志のおかげです。皆様に感謝申し上げます。
本論文では、温室効果ガス排出量と企業パフォーマンスの関係を定量評価し、排出量が少ない程、企業パフォーマンスが向上することを実証しました。温室効果ガスの主な排出源は産業界であり、その削減にはコストが伴います。しかし、それが企業パフォーマンスの向上に寄与することが明らかになりました。この実証結果は産業界における温室効果ガス削減の一助となると考えています。ただし、本テーマは気候変動を緩和するために必要なピースの一つに過ぎません。博士課程後期ではテーマを拡張し、気候変動の緩和に貢献できるよう邁進していく所存です。
最後になりますが、MBAでの2年間は大変貴重な経験になりました。これまで化学を専門としてきた私にとって、経営学・経済学の世界は知らないことが多く、刺激的な日々を過ごすことができました。これまで関わることのなかった業界の方々とも意見を交わすことができ、皆様のテーマに対する問題意識は非常に感銘を受けるものばかりでした。今後の人生においても、このご縁を大切にしていきたいです。
ホワイトペーパーのテキスト分析によるICO後の価格予測(佳作)
経営分析プログラム 米凜太朗さん(2025年3月修了)
このたび、内藤章記念章で入選したことを、大変光栄に思います。
MBAの授業では、様々なバックグラウンドを持つ方々とのディスカッションを通じて、自分の知見をさらに深めることができたと感じている。また、ワークショップでは篠沢義勝先生のご指導のもと、定量分析の手法を学び、データを多角的に解釈する力を養うことができました。その経験が、論文執筆にも大いに活かされたと感じています。
私の論文では、暗号資産のICO(Initial Coin Offering)におけるホワイトペーパーのテキスト分析を通じて、ICO後の価格推移との関係を探求しました。この研究を通じて、情報の透明性や投資家の意思決定に関する示唆を得ることができたと考えています。
今後は、大学院で培った知識や分析力を活かし、学術的な知見を社会に還元できるよう努めていきたいと思います。最後に、本研究を支えてくださった先生方、ゼミの仲間、そして同期の皆様に心より感謝申し上げます。