講義「マーケティング・マネジメント」学生座談会

2025/04/03

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「マーケティング・マネジメント」(担当教員・古江奈々美講師)では、学びのためのさまざまな仕掛けづくりがなされ、マーケティングシミュレーションゲームの仮想体験を通じて、「理論と現実の往復運動」を体感します。講義前半では、企業によるマーケティング戦略と計画の策定・実行について学び、マーケティング・マネジメント全体の理解を深めていきます。次に、この講義で身につけた知識を用いて、架空市場での市場分析やマーケティング戦略の立案・実行をグループワークで進めていきます。講義の後半には、現実の世界で起こったマクドナルド兄弟と、マクドナルド・コーポレーションの創業者レイ・クロックの半生を描く映画を鑑賞して、現実と仮想空間のビジネスとの違いを考える機会もありました。

今回は、この講義を受講した商学部3年の栗生大輝さん、宮下莉子さん、田中優希さん、法邑祐紀さんに講義の様子やそこで得られた学びについて話を伺いました。

シミュレーションゲームで架空の市場の分析・戦略・意思決定

栗生さん
マーケティングというと"ブランドの見せ方"をイメージしがちなのですが、マーケティング・マネジメントは広告や商品開発など"何にどうお金を使うか"というように、設定した目標に向かって経営資本をどう活用していくかを考えます。いわゆるブランド戦略とかではなくて、"どこにお金を使って、どう収益につなげるか"ということです。

宮下さん
実際、マーケティングのゼミとかでは、SWOT分析などで企業の例を見ていくのですが、この講義では、StratXというオンラインでできるマーケティングシミュレーションゲームのプレイを通じて、マーケティングのフレームワークに基づく意思決定を体験することができます。仕組みとしては架空市場の情報を得て、その情報を基にどういうセグメントに向けて広告を出すだとか、どういった製品を販売するかなど、グループで意思決定をしていきます。

田中さん
ゲームは7ラウンドあって、1ラウンドごとに「市場調査」と他のチームがどういう戦略で進めているかの情報を集めて、次のラウンドの戦略を計画します。今後市場がどういう風に成長していくのかという予想もゲームが提供しているので、その情報も活用して次の意思決定をするという感じです。最終的には7ラウンド目で出される各チームの株価で順位が決まり、株価を一番上げたグループが勝ちというゲームになります。

法邑さん
架空市場内での調査や研究レポートにも費用が掛かるルールで、ゲーム上で持っている資金をそれらにどう配分して投資していくのかを考えるのがすごく難しかったです。融資申請もできるのですが、現実世界の手続きのように「融資の申請書」の用意もしなければなりませんし、審査もあって実務に近い体験ができます。融資の利率も順位によって変動しました。融資で得た資金を元に、売れ筋製品の広告にかなり投資をしているチームもあり、製品が好まれる特定の世代に向けて集中的に広告を投下していましたね。

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宮下さん
そうです。はじめに予算は各チームにある程度割り振られるんですけど、その資金では足りないんです。足りないので融資を受けるわけですが、ゲーム上の銀行に事業内容や返済方法などを提示します。そして計画通りに返済をしていかなければなりません。それが結構大変でした。私たちのチームは3ラウンドまで融資金額MAXまで融資してもらって全額を広告や商品開発につぎ込んだら、結果として成績が上向いたので、やはり融資を受けて投資するのは必要なプロセスだと思いました。

講義を通じて学んだこと

田中さん
街を歩いていてふと、「この製品は売れるかな?」と思うときがあります。例えば、勝手に空を飛んでくれる靴があると売れるかなとか。この講義を受けてからは、もしこの製品を世に出すとしたら開発するのに何億も費用が掛かるだろうから、単価は数万円じゃ売れないよなとか。こんな風に現実の世界でもビジネスのアイデアをより具体性を持って想像力豊かに考えられるようになったので、将来何かに生かせると良いなと思いました。

宮下さん
「どうやったらこの製品が売れるのか」という戦略を考えることがとても楽しいなと思いました。私たち4人はデータ・デザイン・プログラム(以下DDP)に入っていて、DDPでもマーケティングに関する講義も結構取っていますが、より実践的に考えるこの講義はとても楽しかったですね。

栗生さん
私たちのチームでは、この架空市場の中で作る製品は「売れ筋の製品のシェアを確保するために保守的なもの」にするか、それとも「最先端技術の製品を増やして攻めるか」、その辺りの戦略について中途半端な意思決定をしちゃったんですよね。チームで話し合って「どうする?どうする?」って、目標が定まらず意思決定を行って曖昧な判断をした結果、売り上げがどんどん横ばいになって伸びなくなった。そのまま最後のラウンド7まで横ばいで、その後、田中さんたちのチームに順位を抜かされてしまいました。田中さんのチームは、最先端の製品で未来を見据えて大きく動いていて成果を上げました。現実世界では保守的になることも時には大事なんだと思いますが、企業経営という観点で言うと「大きく動く」ほうが良いだろうなと思いました。

田中さん
そうでした。僕らは、最先端技術の製品を導入して積極的な戦略を進めたので、それで売上を伸ばしていきましたね。現状維持は良くないというのが結論です。一番上にいれば現状維持をしようと思うかも知れませんが、他のチームも1位を目指してくるので、成長せず止まっていると追いつかれますよね。だから走り続けなければいけない。私のチームも最下位からラウンドを重ねるごとに策を講じて、結果は1位になりました。成長し続けていたからこそ勝てたと思います。またデータに頼っているだけではだめで、競争相手がどんな判断をしてくるのかというのも読んで自分たちの意思決定をしなければならない。結局は人との勝負でどこまで行ってもデジタルだけでは終わらないんだなということに気づけました。

法邑さん
私たちのチームは最先端製品の開発にかなりの投資をして市場に進出しました。とりあえず性能の良い製品を作れば売れるんじゃないかと思ったんですね。結果、一旦はチームの最高順位の2位まで行けたのですが、次のラウンドでは落ちてしまいました。その理由としては、市場調査が十分ではなかったと考えています。市場の特性やユーザーに刺さる製品で勝負しなければならなかった。この授業を通じて、企業が成長するには、ちゃんとした根拠と戦略を持って進出していくのが必要だと分かりました。

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宮下さん
経営や戦略を考えるのって楽しいです。仮想ビジネスでは考えたことがそのまま反映されて、お金を掛けたら売り上げも伸びてくれるんですよ。ですが、現実の世界では、講義の後半で観た映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』のように、マクドナルド兄弟が始めたハンバーガー店が、後にマクドナルドを世界最大のファストフードチェーンに成長させた、マクドナルド・コーポレーションの創業者レイ・クロックに買収されてしまうというようなこともあります。

田中さん
この講義では、前半に学んだ「企業によるマーケティング戦略と計画の策定・実行」の内容を実際の意思決定に反映するというのがテーマでした。学生の意思決定には先生はあまりタッチせず、自主性に任せてくださいました。自ら情報を探しに行って、自ら戦略を立て、自分たちで成長していくという、そういう自己完結の成長プロセスのようなものを講義では目指していたのかなと思います。

学生の皆さんへ

「マーケティング・マネジメント」は、企業によるマーケティング戦略と計画の策定・実行を学ぶ講義です。
座学でマーケティング戦略の関連理論を学びながら、世界のビジネススクールで使用されているマーケティングシミュレーションゲームにグループで挑戦します。
このシミュレーションゲームには精巧な設定が施されており、現実世界の複雑さを体験することができます。
冬学期という短い講義期間内に、何度も迅速なマーケティングの意思決定をすることが求められ、最新の市場の動向や他のライバルグループの戦略の意図を探りながらゲームを進めていきます。
小テストやシミュレーションゲームのためのグループワークがあるため、大変で忙しい講義だと思います。
しかしながら、本講義を通じて、教科書を読んで理論をインプットするだけでは得られない、現実社会を理解することの難しさと面白さを知ることができます。
意欲のある人はぜひ受講してみてください。

担当講師 古江 奈々美