【一橋大学の科研費研究】「確率最適制御における再帰的効用最大化問題の新展開」/畑 宏明(経営管理研究科 教授)

2025/11/19

科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」です。ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行います。研究者によるピア・レビューという検証プロセスの利点は、研究計画の妥当性を専門家の視点からより正確に判断できるほか、応募者にとって、同じ分野の研究者に自分の研究がどう評価されるかを知る機会にもなっています。このことは、とりわけ若手の研究者にとって一つのインセンティブになっているといえます。本学の研究環境は研究大学としての文化や風土が根付いており、新規課題採択率は、例年全国1位を獲得しています。

今回は、畑宏明教授の科研費研究「確率最適制御における再帰的効用最大化問題の新展開」についてご紹介いたします。

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畑 宏明

2000年に大阪市立大学理学部数学科を卒業し、2006年に大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程を修了して理学の博士号を取得。その後、中央研究院數學研究所(台湾)で博士後研究學者、静岡大学教育学部数学教育専修助教、同准教授を経て、2020年より現職にある。専門は確率制御、数理ファイナンスであり、特に確率制御理論を用いたポートフォリオ最適化問題に関する研究を行っている。

研究テーマ:「確率最適制御における再帰的効用最大化問題の新展開」

研究期間(年度):2024-04-01 - 2028-03-31  研究種目:基盤研究(C)  審査区分:小区分12040:応用数学および統計数学関連

研究計画:

本研究は、近年数理ファイナンスで注目を浴びているEpstein-Zin型再帰的効用関数を用いた期待効用最大化問題に関して、①一般的な非線形確率ファクターモデルを用いた解析、② ①に対する方策改善アルゴリズムの構築およびその収束に関する研究、③部分可観測の場合の解析に取り組むことです。本研究で、動的計画原理より導出されるHamilton-Jacobi-Bellman方程式のより一般的な解の存在定理を開発することで、再帰的効用関数を用いた期待効用最大化問題の新たな解法が確立され、確率制御、数理ファイナンス、偏微分方程式、強化学習、経済学、金融実務などへの応用が期待されます。