第56回一橋祭 一橋祭運営委員会企画「中野聡学長講演会~一橋150年の歩み、そしてこれから~」

2025/12/10

去る11月23日、国立キャンパスの西本館※1にて開催された本講演会は、一橋大学創立150周年を記念した一橋祭運営委員会の企画で、本学の中野聡学長(社会学部教授)に、150年の歴史の中で一橋大学の教育・研究機関の変化と中野学長ご自身が思い描く学生像についてお話をいただきました。本企画者である一橋祭運営員会の山下新太さん(商2年)に、この企画への思いなどを伺いました。

企画者コメント:山下新太さん(商2年)
一橋祭運営委員になろうと思ったきっかけとこの企画への思い

img_blog20251209_11.jpg

せっかく一橋に入ったのだから、一橋の良さをより引き出すことができる活動をしたいと思い一橋祭運営委員会に入りました。1年生の時はクラブ対抗歌合戦という歴史あるステージ企画を担当し、一橋生が必死に練習を繰り返し、輝く姿に感動しました。こうしたステージ企画の魅力を知る一方で、一橋の学術性を打ち出した講演会を企画したいという思いも持つようになりました。そして2年生となり、一橋大学創立150周年を記念する企画を打ちたいと考え、今回の「中野聡 学長講演会 ~一橋150年の歩み、そしてこれから〜」を企画しました。一見難しく見えてしまいがちな講演会企画ですが、堅苦しくなりすぎず、より多くの来場者の方に楽しんでいただけるように工夫しました。

事前準備では、計7人の仲間でビラや立て看板などを作成し最善を尽くしました。しかし、企画当日になってもどれくらいの方に足を運んでいただけるのか、そして楽しんでいただけるのか、不安でいっぱいでした。実際に開場してみると、200人を超える方々が教室を埋め尽くし、学長ご自身のお考えや一橋大学の未来について最後までじっくりと話を聞かれていました。

後輩のみなさんへ

一橋祭はさまざまな企画や参加形態があり、どれも魅力的なものです。委員としてでも、参加団体としてでも、来場者としてでも楽しむことができ、一橋祭に向けて全力で準備することは素晴らしい人生経験になると確信しています。ぜひ一橋祭を楽しんでください。

img_blog20251209_12.jpg

中野聡学長講演会 ~一橋150年の歩み、そしてこれから~

本学は2025年9月24日に創立150周年を迎えました。1875年に商法講習所として設立されて以来、150年にわたる歴史のなかで培ってきた"一橋らしさ"とはなにか、これまで築き上げてきた"一橋らしさ"を未来にどうつなげていくかという取り組みについて、中野学長よりお話いただきました。講演後の質疑応答について、抜粋してご紹介いたします。

※一橋大学の現在の姿および今後のビジョンについては、「統合報告書」にてご覧いただけます。

<質疑応答>

img_blog20251209_13.jpg

Q 学長在任中の最後の一橋祭になると思いますが、お気持ちをお聞かせ願えればと思います。

この一橋祭の開催期間も重要ですが、この祭を中心にして一橋祭運営委員会は一年を通じていろいろな取り組みをしています。例えば、植樹会※2のボランティアでキャンパスの緑化推進・環境整備保全のための作業活動などもしていただいている。こういった大学づくりに参加している学生の皆さんが主体的な雰囲気でやっていただいている部分があって、この大学のもともとの良さであり、一橋会※3からつながっているところでもありますので、そういう意味でも一橋らしさをつくる重要なイベントであり営みかなと思っています。

Q 一橋大学だからこそ学べることや、身に付けられることはなんでしょうか。

これは言語化しにくいのですが、もちろん学知、ナレッジなどがあります。しかし、"ナレッジ"だけであれば、どこでも手に入り、一橋大学でなくとも身に付けることができるかも知れません。ですが、一橋大学だからこそ学べることや身に付けられることは、"エクスペリエンス"といった一橋大学での経験です。その経験というのはコミュニティ的なもので、多くの先輩方の話からもゼミだとよく聞きます。例えば、会計学です。「会計学のゼミとは何か」。一見スキルセットを学ぶためのものと思われますが、実際は全然違っています。それはゼミを指導してくれている先生と学生との間には全人的な交流のようなものがあって、その方が持っている知識や経験を継承していっているんですね。そう言った意味でいうと、スキルじゃなくて、パーソン、いわゆるリベラルアーツというものが伝わる場としての役割になることも多いです。ゼミに限らず、少人数の授業、また学生同士の関係を築いたり、そういう部分のエクスペリエンスがあるから、卒業してからもポジティブに大学のことを思い出してくれる人が多いんじゃないかなと思います。

Q 150周年ということで、これから先100年後、150年後の一橋大学の未来の話を聞かせてください。

未来の一橋大学の話をするとすれば、これまでの一橋大学もそうですし、これからもそうあってほしいという中でのキーワードとして、"リアリズム"ともう一つは"サステナビリティ(持続可能性) "というワードがあります。この持続可能性については、150年前にはなかった言葉で、現在では非常に深刻な課題になっています。持続可能な地球と人類・社会を両立させるには、社会をそれこそ経営管理していかなければならないということもあるわけです。そういったマネジメントについて、指導的な役割を果たしていくところに一橋が入っていてほしいなと思います。社会が暴走して、持続可能性と矛盾をきたすことになりそうなときに、どういう調整が必要かということについて、対立する意見も見ながら解決していくのが、一橋らしい人材かなと思っています。そういう人材を生み出す役割を果たし続ける大学であり、一橋生はそこに集う人々であってほしいなと思います。

※1 会場となった国立キャンパスの西本館は、文部省建築課の技師による設計のロマネスク風の意匠を特徴とした建物で、昭和5年(1930年)12月に完成しました。建物の随所に見られるロマネスク特有の怪獣は、国の登録有形文化財(建造物)に指定されている、伊東忠太の設計の兼松講堂に倣ったものだと言われている。

※2 一橋植樹会は一橋大学の卒業生、学生、教職員が一体となってそのキャンパスの緑の保全と環境維持を行うボランティア組織。

※3 一橋会は1903年(明治35年)、東京高等商業学校においてはじめてもたれた学生の自治組織。1940年(昭和15年)の戦下、「一橋会」は軍部により「一橋報国団」に改組を余儀なくされ、戦後、復活をみなかった。現在の校友会は一般社団法人如水会で、一橋大学の卒業生と学生等で構成される同窓会。単に「会員相互の親睦」だけを目的とした同窓会ではなく1914年の設立以来、「母校支援」を第一義に掲げている。