寄附講義「観光経営論」【学生座談会/温泉留学 はじめまして、第二のふるさと】①

2024/03/11

この講義は、日本観光振興協会の寄附講義で、実務者による講義(インプット)と学生が主体となったグループワーク(アウトプット)の相互学習により、学生が自ら考え課題解決の方法を見つけながら、観光に対する理解を深めていきます。講義前半では、ツーリズム業界各界の第一線で活躍されている実務家が、それぞれの観点からの講義を行うとともに、これまで商学部科目で学んできた「マーケティング」「経営学」等の応用を目的としたグループワーク形式の授業を展開しています。6名前後のグループに分かれディスカッションと発表を行うことで、自ら観光について考え、理解を深め、経営学の理論を観光業界や地域の課題解決のために応用できる力を身につけます。

今回は、グループの発表で優勝したチームから、商学部3年の北村理紗さん、後藤一矢さん、谷澤來桃さん、吉野隆生さんに、講義の様子や企画したビジネスプラン「温泉留学」について話を伺いました。

――講義とグループワークで構成される、「観光経営論」を履修しようと思ったきっかけは何ですか?

吉野さん:
私たちが入学したのは2021年で、その頃はコロナの影響で対面の授業があまりありませんでした。私にとってゼミナール以外での対面形式は、この授業が初めてだったんです。ずっとオンラインで対面授業に慣れないこともあり、ハードルは高かったのですが、観光という興味のあるトピックと現地調査という他の授業にない特徴があり、履修を決めました。

北村さん:
私も吉野さんと同じで、オンラインの科目が多かったので、対面の授業を受けたいなと思ったのがきっかけです。

谷澤さん:
私の場合は3年生の春から就活を始めていて、その中で観光系とかインフラ系、物流系などを考えていました。この授業では、国土交通省や観光関連のさまざまな分野のプロフェッショナルな方が、講義に来て話をしていただけるので履修しました。

後藤さん:
私も観光に興味があったということに加えて、商学部でマーケティングや経営学などを学んでおり、さらにこの授業では具体的なビジネスプランを計画するのが魅力と感じました。実際、これまで履修した講義の中で、一番実践に近く、とても面白いと思いました。

――グループワークで考えたビジネスプランはどのようなものですか?

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吉野さん:
グループワークを始めるにあたって、先生から3つのテーマがあげられました。1つ目は、「雪国観光圏」(地域連携DMO)にある「雪室」の商品に関するプラン、2つ目は、平家落人の伝承やマタギ文化など、昔ながらの生活様式が色濃く残る津南町、そして、私たちが選んだ新潟県十日町市の松之山温泉地域です。どの地域にするのかを決めるためにグループの中で投票をしたのですが、ほとんどのメンバーから「温泉は魅力的だよね」という声があがったことと、温泉や旅行に愛着がある人が多く、ビジネスプランのイメージが起きやすかったということがあり、松之山温泉に決まりました。

私たちは、まず、新潟県十日町市が世田谷区との間で、再生可能エネルギー活用(地熱発電)の自治体間連携を結んでいることに着目しました。そこで、世田谷区という特定の層に絞ったターゲティングとして、区内在住の中学生に対して、「サステナブル」かつ「地域密着型」の特徴を持たせる体験型学習プログラムの提供を考えました。

この松之山温泉地域は、日本三大薬湯にも数えられる良質な温泉で、地域の強みとして、サステナビリティと結びついた温泉文化があります。しかし一方で、知名度が低く、顧客も高齢化しており、今後の増加が見込めないという問題がありました。それを解決するためには何が必要かを考え、生まれたコンセプトが、「温泉留学」です。その内容は、世田谷区の中学生が松之山温泉地域を訪れて、旅館での職業体験をしたり、農業体験をしたり、観光というよりも地域の暮らしを理解するようなプログラムで、「みんながハッピーになれる」ということをベースに、それぞれのニーズに合わせた提供価値を考えたビジネスプランです。

――ワークグループによる現地調査の進め方

北村さん:
授業自体はグループワークとは別に講義があるので、ランチタイムなど授業以外の時間に毎週定例のミーティングを設けました。最初は、松之山温泉地域の何が魅力なのか、どういう資源を生かせるのか、どういう課題があるのかという基本的なことが分からなかったので、地域や歴史、温泉などを調べるところから始めました。私たちのチームは、テーマを決めてから2週間後ぐらいに、松之山温泉地域へ現地調査に行きました。

後藤さん:
地元の方々にヒアリングをしている時に、松之山温泉地域では地熱を使った発電を行って、世田谷区へ売電しているという話を伺ったんです。そこから私たちのビジネスプランのアイデアが湧いてきました。

谷澤さん:
その現地調査で地熱発電の担当の方にインタビューをさせていただいたり、偶然居合わせたバイナリー発電の企業の方にお話を伺うこともできました。早い時期に地元でいろいろと情報を得られたのは大きかったなと思います。

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北村さん:
他の班の進め方は私たちとは別で、授業後半に入ってから現地調査に行き、固まっていたアイデアが成功するかを確かめるための現地調査であったと思います。初期段階には、「温泉留学」の案の他にもいろいろなアイデアがありましたが、これらは現地の方々の声を全く反映していないものでした。実際に現地で話を聞いてみると、「これはちょっと違う、こっちの方がよい」などという声があり、事前に行ったヒアリングの内容を、ビジネスプランに反映させることができました。

後藤さん:
松之山温泉地域へは、東京から上越新幹線で越後湯沢駅まで行き、そこからほくほく線まつだい駅へ50分、さらに、まつだい駅からもバスで30分という立地です。最初に現地について調べている時から、交通の便というところが弱みかなと考えていたので、まずは最初にその弱みを上手く強みに転換できないかというところから、現地に滞在する「留学」のアイデアに結びつきました。

谷澤さん:
現地までのアクセスについては、きっとどの班も苦労されていることかと思います。

――松之山温泉地域では、どのようなところを視察されたのでしょうか?

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北村さん:
1泊2日の現地調査では、初日は旅館の方に話を伺い、翌日は2班に分かれ調査を行いました。この地域には、日帰り温泉施設や十日町市も力を入れている「大地の芸術祭の里」、越後松之山「森の学習」キョロロという自然学習体験の施設があります。また近くには3ヘクタールほどの丘陵に樹齢約100年のブナが広がる「美人林」などがあり、そこでは「サステナブルタイム」というタイトルで、地元で採れた食材を使った料理を味わう魅力的なイベントも行われていて、豊かな自然を提供価値としています。

吉野さん:
実は、私たちの他には5チームあるのですが、うちのチームだけ一番早くから現地調査を始めてしまい、ちょっと先走り感はありましたね。でも、やはりネットから得られる情報は十分ではなくて、初期の段階で、現地で集めた情報を基に、いろいろアイデアを検討できたのは良かったと思います。