「特別講義(スタートアップの資本政策)」(春学期)ゲスト講師・一橋卒業生スタートアップ代表者たちからのメッセージ①

2024/07/25

商学部の春学期「特別講義(スタートアップの資本政策)」(担当教員:安田行宏教授、熊本方雄教授 代表講師:株式会社ストライク代表取締役社長 荒井邦彦氏 )では、本学卒業生のスタートアップ企業代表者8名をゲスト講師として迎え、事業を始めた際のエピソードや、その後の成長をいかに実現したかなど、起業家ならではの話を伺いました。それぞれ現在は上場し、さらなる発展を目指すビジネスリーダーからの珠玉のメッセージをまとめました。

起業の思い

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荒井邦彦氏
株式会社ストライク
代表取締役社長

「起業は、きれいごとではなく情熱」

起業には、自分がやりたいと思うことを追求するエネルギーが必要です。最近のスタートアップの事業提案では、起業の背景として社会課題を客観的に分析した上で事業内容を説明する人もいます。しかし、何より自分自身が情熱を感じることが大切であり、だからこそリスクを取って大きなステップを踏み出せると思っています。理念や社会的な意義は、起業後にさまざまな困難に遭遇する中で見出し、磨いていけば良いと思います。

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高橋知道氏
オープングループ株式会社
代表取締役

「理屈ではなく、動物的な直観を信じる、そして行動する」

起業家がどこからエネルギーを得るか。私の場合は、内なる自分の中にある本当の声です。きれいに分析した上での理屈ではなく、動物的な直観を信じて行動することがとても大切だと思っています。それがなければ、他人を巻き込む力や、突破力は生まれてこない。「ハズレ」になるかもしれないですが、自分を信じることでエネルギーが生まれ、リーダーとして行動できるのです。

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吉村元久氏
株式会社ヨシムラ・フード・
ホールディングス
代表取締役CEO

「『将来は大実業家になる』という思いが、モノの見方を変える」

私は、小学生の頃に将来の夢を「大実業家」と書いていました。その思いを持ち続けて、大学は商学部を選び、就職は商売の勉強ができる証券会社を選びました。現在のビジネスモデルのヒントを得たのは、米国留学中に出会った講師の話で、彼は事業投資家としていくつかの中小企業に出資し、ホールディングカンパニー的な運営をしていました。そうした日頃出会う話の中から自らのビジネスアイデアを見出せたのは、「実業家になる」という志を胸に持ち続けたからだと思っています。スタートアップをしたいという視点を持っていれば、同じ風景・同じ情報に接していても見え方や感じ方が違ってくるものです。

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冨田和成氏
株式会社ZUU
代表取締役

「夢を追いかけることでエネルギーは生まれる」

私は学生時代に起業しましたが、その時は起業自体に憧れていて、何を成し遂げたいのかという目的が希薄だったために、長くは続きませんでした。現在は、事業を通じて「世の中の機会格差をなくしたい」という思いで取り組んでいますが、それは学生時代に仲間たちと熱く語り合った社会であり、今もそれが私の夢です。何かに挑戦するために必要な資本に誰でもアクセスできる環境を作ること、それを目的として起業しました。起業はあくまで夢の実現のための手段であり、夢を追いかけることでエネルギーが生まれ、それが事業の発展につながっています。

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佐々木大輔氏
freee株式会社
CEO

「もっと自由にキャリアデザインを考える」
「自分がしていることが社会のためになるという実感」

グーグルに勤めていた時に、米国人の同僚で、以前は起業家として会社を経営していたという人がいました。起業した会社を卒業した上で会社員になるという珍しい選択肢ですが、このようにキャリアデザインはもっと自由に考えて良いと思います。私の場合は、最初から起業を考えていたのではありませんでした。グーグルの時に聞いた「私たちの仕事は社会運動です」という言葉に共感し、自分がしていることが社会のためになると実感できる仕事がしたいと思ったことが起業のきっかけになりました。

 

リーダーの資質

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冨田和成氏
株式会社ZUU
代表取締役

「経営トップは成長のチャンスに最も恵まれている」

経営トップは、会社の発展と共に立場が上がり、より良質なネットワークや新しい情報に社内の誰よりも早く、しかも多く接する機会があるので、成長のチャンスに恵まれています。トップにはそうした好循環が生まれやすいのですが、一方で社内の仲間たちが同じペースで成長できるとは限りません。だからこそ、いずれ会社を後任に託すことを早くから考えておくべきだと思っています。会社が成長してくると、それまでは採用できなかったような優秀な人材が入ってくれるようになります。私は常に、次の社長を探すつもりで採用にあたっています。

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高橋伸彰氏
株式会社フィル・カンパニー
代表取締役会長 /
ファルス株式会社
代表取締役CEO

「事業家のタイプには、ゼロから1を立ち上げるのが得意な人と、1から10に成長させることが得意な人がいる」

私は、リスクを取ることに恐れはないので、ゼロから1を立ち上げることに喜びを感じます。ただ、一旦立ち上げた事業を1から10に育てていくことに向いていないとの自覚もあります。これら2つの事業家タイプには異なる資質が必要です。私の場合は、2005年に創業し、11年後に上場しましたが、その時点で経営を後任に託すことにしました。現在は、会社が第3の創業期を迎えるにあたり、改めて経営に取り組んでいます。

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高橋知道氏
オープングループ株式会社
代表取締役

「データサイエンス力×課題解決力が必要」

これからは、IT企業に限らずすべての産業がソフトウェア産業になるでしょう。例えば、自動車は単なる移動手段ではなく、ソフトウェアによってエネルギーマネジメントという新たな付加価値を提供するサービスになります。ソフトウェアによる新たな付加価値を創造するためには、データサイエンス力と社会課題解決力の両方を兼ね備える必要があります。数学力(データサイエンス力)×社会科学の力と言い換える事も出来ます。一橋は、数学を重視する社会科学大学ですから、これからのビジネスリーダーとして大いに期待できます。