春夏学期「会計・監査実務のフロンティア(あずさ監査法人寄附講義)」

2026/09/07

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商学部の春夏学期に開講されている「会計・監査実務のフロンティア(あずさ監査法人寄附講義)」(担当講師:有限責任あずさ監査法人理事長・山田裕行氏ほか)は、会計・開示、企業統治、監査に関してビジネスパーソンに不可欠な知識を習得するほか、監査法人等で活躍する専門家の業務について知見を得ることを狙いとしています。今回は、全14回のうち、会計実務と監査業務の最新動向についての講義をそれぞれ紹介します。

会計実務の最新動向

講師:有限責任あずさ監査法人 アドバイザリー統轄事業部 マネージング・ディレクター 熊倉彰宏氏

この講義では、財務諸表がどのように作られているのかという会計実務の基本から、財務経理部門におけるAIの活用、そしてこれからの会計人材に求められる役割について解説がありました。

財務諸表を作成するまでの流れ

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企業活動では、商品を販売する、仕入れる、代金を回収するといった日々の取引が発生します。これらの取引を会計上のルールに基づいて仕訳し、集計・整理することで、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などの財務諸表が作られます。例えば、企業グループに属している複数の会社の連結決算の場合には、親会社が持っている売掛金と子会社・関連会社などが持つ買掛金を消去するといった処理を行います。また海外子会社の場合には、現地通貨から日本円などへの換算も必要になります。

ここで重要なのは、この財務諸表は経理部門だけで作っているわけではなく、社内のさまざまな部署から集まる情報によって成り立っているという点です。例えば売上を計上する場合、営業部門が顧客との契約や受注に関する情報を持ち、物流部門などが実際に出荷を行い、そして最後は入金を確認するまでの各担当の情報が経理部門に連携されます。また、企業では膨大な取引を経理処理するため、販売管理システムや会計システムなど、さまざまなシステムを利用しています。システムを活用することで、取引情報を効率的に集約し、正確な会計情報を作成できるようにしています。

AIによって変わる財務経理業務

近年は、こうした財務経理の業務にもAIの活用が広がっています。具体的には、情報検索や問い合わせ対応、文書の要約・生成、会計処理の判断支援、請求書などの定型業務の自動化、さらにはデータ分析や経営課題の発見など、幅広い領域で活用が進んでいます。

例えば、社内の各部署から経理部門に寄せられる「この取引はどのように処理すればよいですか」といった問い合わせについて、過去の回答や社内ルールをデータベース化しておけば、AIが自動的に回答することが可能になります。また、文書の要約や資料のドラフトをAIに作成させ、人間が内容を確認・修正することで、資料作成の負担を減らすこともできます。さらに、請求書処理などの定型的な作業を自動化することで、担当者の時間をより有効に使えるようになります。

今後は、個々の業務にAIを導入するだけでなく、複数のシステムやAIを組み合わせた「AIエージェント」の活用も進むと考えられます。売上や利益、固定資産などのデータを横断的に集め、数値の変化を分析し、その背景にある理由を探るといった使い方です。

これからの会計人材に求められる力

AIによって定型的な業務が自動化されると、会計人材に求められる役割も変わります。これからは、会計ルールを覚えて正しく処理するだけではなく、作られた数字を分析し、その数字が企業経営にどのような意味を持つのかを考える力がより重要になります。

求められる財務経理部門の在り方は、以下の図のように現在の「ピラミッド型」から将来は「逆ピラミッド型」へと変革していくと考えられます。つまり、入力や仕訳などの定型的な業務はできるだけシステムやAIに任せ、人間は経営に役立つ情報の分析や洞察、意思決定に力を注ぐという考え方です。

AIによって経理財務部門の会計処理をする人材が不要になるのではなく、人間が担っている仕事の内容が変わっていくと考えることがポイントです。会計・財務の専門知識に加え、データを分析する力、他部署と連携する力、そして数字の背景にある事業や経営課題を考える力が、これからの会計人材には一層求められます。

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監査業務の最新動向

講師:有限責任あずさ監査法人 金融統轄事業部 パートナー 峨家 将氏

この講義では、監査業務の基本的な役割から、監査の魅力、コンサルティングとの違い、そしてAIやサステナビリティなどによって変化する監査業務の今後について解説がありました。

監査業務の基本と役割

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監査は、企業が作成した財務情報が適切であるかを、独立した立場から検証し、その信頼性を保証する仕事です。監査というと、完成した財務諸表の数字をチェックする仕事というイメージがありますが、実際には企業の事業プロセス全体に関わります。企業が事業を計画し、意思決定を行い、取引を実行し、それを会計処理して財務諸表を作成するまでの流れを我々も理解したうえで監査を行います。

そのため監査人は、最終的な数字だけを見るのではなく、「なぜこの取引が行われたのか」「この数字はどのような事業活動から生まれたのか」といった背景まで確認します。監査には、問題や誤りがないかを確認する「批判的機能」とともに、適切な会計処理や業務プロセスについて企業に助言する「指導的機能」があります。つまり、監査は単に間違いを探す仕事ではなく、企業の活動を理解し、より適切な財務情報につなげていく仕事でもあります。

監査業務の魅力

監査の大きな魅力は、監査法人という一つの会社に所属しながら、さまざまな企業や業界について幅広く知見を広げることができる点です。監査を通じて、企業の事業内容や経営上の意思決定、業務プロセスなどを深く知ることができます。また、複数の企業を担当することで、業界ごとの特徴を比較しながら理解を深めることもできます。

さらに、監査で身につけた会計・財務の専門知識や、企業を多面的に見る力は、その後のキャリアにも生かせます。監査を続けて専門性を高めるだけでなく、アドバイザリーなどの業務に進むなど、さまざまなキャリアにつながることも魅力です。

監査とコンサルティングとの違い

監査とコンサルティングは、企業に専門知識を提供するという点では共通していますが、目的が異なります。コンサルティングやアドバイザリーは、企業が抱える課題に対して解決策を考え、企業を支援することが中心です。一方、監査は企業から独立した立場で、財務情報が適切であることを確かめる「保証業務」です。

また、監査では企業の事業や経営を継続的に理解しながら、年間を通じて企業全体を見ていきます。これに対してアドバイザリーは、企業が必要とする特定の課題や領域について、必要な期間に支援するケースが中心です。この「企業全体を継続的に知ることができる」という点は、監査ならではの大きな特徴です。

サステナビリティやAIで変わる監査

今後の監査業務では、対象となる情報が広がっていきます。特にサステナビリティ情報については、温室効果ガス排出量など、これまでとは異なる情報を収集し、適切に開示するための新しいプロセスが必要になっています。今後は、こうした非財務情報についても、その正確性や信頼性を確保することが監査人にとって重要なテーマになります。また、AIやデジタル技術の活用がさらに進むと考えられます。このように、会計・監査の知識だけでなく、新しいテーマを理解する力も求められます。